やはらのお気持ち

私の主観&感想だけ!

夏川椎菜さん主演「オルレアンの少女」東京公演千秋楽を観てきました

夏川椎菜さん主演の舞台「オルレアンの少女」の東京・千秋楽公演を観劇してきました。

大変素晴らしい舞台でしたので、思ったことを残しておきたいなと書きました。

 

ネタバレ感想だらけなので、舞台を観てから読んだほうがいいかもしれない…

ただ史実も有名ですし、事前のインタビューなども見ていて、ネタバレ気にしない!

おすすめシーンとかあるなら見逃したくないな~なんて人は読んでみてください。

 

~感想~

夏川椎菜さん

まずはオタクらしく推しの感想を書きますね。

夏川椎菜さん、ジャンヌ・ダルクという難しい役どころ、加えて初主演、初座長というプレッシャーにも負けずに東京7公演をやりきっておりました。

すごい、すごい!と東京千秋楽で私ボロボロ、鼻水垂らしながら泣いてしまいました。

ベテランの皆様に囲まれて、ぬくぬくというイメージではなく。
立ち姿ひとつにも存在感があり、座長としての役割を立派に勤め上げていらっしゃいました。

お気に入りのシーンを挙げるときりがないのですが、ライオネルとのラブシーンは非常に驚いたと同時に、女優としてのステージが上がっていったような気がしてとても嬉しかったです。こんな表情をするんだ…と釘付けになりました。

のちのライオネルのシーンも、このシーンがあることでより苦しく悲しくなって返ってきました。ジャンヌが心を許した男性との、とても大切なシーンでした。

火刑台で蘇ったあとの表情も迫力がすごくて、正直怖かったです。鬼気迫る演技でした。他にも叫ぶシーンがたくさんあるのですが、シーンごとに込められている様々な感情に激動の運命をまざまざと見せつけられました。

ラジオの様子からも大変な稽古なのが伺えておりましたが、東京千秋楽の挨拶はとても誇らしかったです。

やりきった安心感、緊張の糸が切れたように感情になった言葉がどんどんでてきてました。

稽古期間中に自分の至らなさに何度も直面し、それでもできないままにしたくなくて挑戦して、でもできなくて苦しくて身動きが取れなくなっていましたとお話してくれました。本当に最後までやりきれてよかった😂

この挨拶は東京千秋楽が本当に素晴らしいものであったと、夏川さんも自分自身を認めてあげれたから出てきた言葉なのだと思います。

それだけやりきれて、自分に合格を出せたことに自体にも大変感動してしまいました。

自分に嘘がつけない夏川さんらしい、不器用でドストレートな挨拶でした。

でもその分、私たちは心を動かされるのだろうなと、本当に素晴らしい舞台でした。

これまでの苦しみは血となり肉となり確実に糧になってると確信しております。

なんだかんだ私も夏川さんを応援して長くなってきましたが、それでもまだまだこんなに惚れ直させられるなんて思いませんでした。

そのくらい衝撃的で、心が動いた舞台です。本当にありがとうございました。

 

溝口琢矢さん

シャルル王、ライオネル、レーモンの三役。

最初は頼りなかったシャルルがどんどん頼りがいのある王様になっていくグラデーションが大変自然で気づけばシャルル王が大好きになっていましたね。

演説をするシーンの声は、何度聞いてもしびれました。

優しい青年のレーモン、誇り高き騎士ライオネル、ダメダメから素晴らしい王になるシャルルの三役の演じ分け。シャルル王の成長のグラデーションと同じく違和感なさすぎて、逆に何も感じなかった…あまりにも自然に三人がそれぞれ舞台にいたんですよね。

溝口さん三つ子だったりする?

お芝居をする方への褒め言葉としてふさわしいものかは分かりませんが、溝口さんは本当に安定感というか、安心感がすごいんです。観ていて安心するというか。

決めるところはこちらの期待に答えてくれるし、本当にすごい!

溝口さんの好きなシーンは、第五幕にてライオネルがジャンヌを想う心と、立場と、ジャンヌの言葉に死ぬほど葛藤しているところです。

このあたりの各キャラクターの心中を考えると、どのキャラクターも救いがない行き止まり感があって、本当に辛いんですよね。

これがジャンヌを見ることができる最期だと感じながら戦地に赴くライオネル、哀しさと悔しさが目にこもっていて釘付けになりました。

 

松田賢二さん

デュノワとタルボット、2つの国の騎士を演じていましたね。

どちらもめちゃくちゃかっこいい、理想の上司的なかっこよさがありますよね…特に好きなのは第三幕タルボットの最期のシーン。
パリの民衆が寝返ってしまったことを聞き、絶望の淵で最期を迎える。

戦争は何も生まないし後世に残すものもない…辛すぎる…

デュノワの魅力は何と言ってもその器のデカさかと…彼はどんな時もジャンヌの味方であり続けました、最期の時まで…

神の力をみせるジャンヌに対し、横に並び支えようとしていた漢の中の漢ですよ。

情けないシャルルを置いて、戦火に身を投じようとするシーンも何もかもカッコ良すぎる…

二枚目が本当に似合いすぎてて、最後の挨拶中もクールめに決めてる姿にシビレました。男が惚れる男ってやつですね。

大変ミーハーで恐縮なのですが、仮面ライダーが好きなもので、夏川さんが共演すると知ったときから「斬鬼さんだぁぁぁ!!!」とテンション爆上がりでした…

ご挨拶でお話しくださいましたが、客席とステージが非常に近い舞台ということもあって、演者と客席が一緒になって世界を空気をつくっていることを本当に実感できる舞台でした。

こちらが世界に入り込めば入り込むほど、演者の皆さんの立体感がメキメキ増していって自分もステージに立っているかのような、あの世界の住人であるかのような感覚に陥りながら観劇することができました。

 

峰一作さん

ラ・イールやモンゴメリ、ベルトランといったジャンヌの感情をポイントポイントで揺り動かす重要な役をされていました。

特に好きなシーンは第二幕にて、ジャンヌが初めて人を殺してしまうシーン。

必死に命乞いをするモンゴメリですが、命乞いも虚しくジャンヌに殺されてしまいます。それまで気丈だったジャンヌも動揺し、自らが殺したモンゴメリや周りの死体の山に涙していました。

どれだけ神の力を授かっていても、中身はただの少女なのだと我々に印象付けてくれるシーンだったと思います。

 

宮地大介さん

ジャンヌの父ティボー、ブルゴーニュなどジャンヌによって大きく人生が変わっていく人物を演じていらっしゃいました。

この後でも書いてあるのですが、第二幕にてブルゴーニュとシャルルが和解するシーン。

国を裏切り、ジャンヌを魔女だと口汚く罵っていたブルゴーニュがジャンヌの真摯な言葉に自らの過ちに気づき、心を開くシーンは何度見てもぐっと来ます。

ジャンヌも人を殺める以外で国を救うことができた重要なシーンですし、デュノワもジャンヌに対する信仰をより強いものにするシーンでした。

思えばこのときが物語を通して一番平和な時間だったかもしれませんね。

宮地さんの演技には至るところでやられてしまいます。

人間としての深みというか、宮地さんがいるシーンは説得力が増すんですよね。

ティボーもブルゴーニュも癖のある人物ですが、本当にその場にいるような厚みを感じました。

 

愛原実花さん

私、本当に愛原さんが好きになったんです。

イザボー太后とアニエスどちらも重要な登場人物でした。

シャルル王の愛人として登場するアニエス。その見た目の美しさと、気丈な振る舞いに最初はシャルルにはもったいないな!!なんて思っていたんですよね。

本当に美しいし、包み込むような優しさと、強さを持っていて最高の女性だろ!!と

シャルルだけでなく、弱ったジャンヌにも寄り添ってくれていました。この作品の良心だな…と私もアニエスの胸に隠れたかったです…すみません。

ただですね、私イザボー太后の方が大好きなんですよね。言ってしまえば悪者なのですが、どうにも憎めないんです。

 

イザボー太后

イザボー太后とジャンヌは紙一重の存在だったなと思っています。2大ヒロインぐらいの気持ちも。

第五幕にて、ジャンヌを火あぶりにした際にそうなのかな…と気づいたんですが

イザボー太后はジャンヌを追い詰めながらも、ジャンヌの奇蹟にすがっていたうちの一人だったのではないかなと思っています。

ジャンヌが火刑台にかけられ、火あぶりにされる際、苦しむジャンヌを見ながら太后はずっと祖国を救うのではないのか?と語りかけるんです。

しかしジャンヌは火あぶりの末に絶命してしまいます。その時のイザボー太后の表情は、一切晴れてはいないんですよ。むしろ希望を失ったような表情をしていました。

そして、ジャンヌが神の力で蘇り兵士を倒しているときのイザボー太后の表情は、まるで自らが信仰している神を見ているかのような表情に見えたんです。

その後、絶命したライオネルを胸に抱き泣き叫ぶジャンヌを見ているイザボー太后は静かに涙を流していました。

 

この時に違和感が全て納得に変わりました。

イザボー太后は、国を追い出され敵国に渡った女性。

そしてジャンヌも、愛する国を追われた女性という、非常に近い境遇なんですよね。

イザボー太后は、同じような境遇のジャンヌに対し自分を重ね、可能性を見出そうとしていたのではないでしょうか。

自らの人生が間違いではなかった、まだやり直しもきくし、どうにかなる。それを似た境遇のジャンヌに重ね、さらに深刻な状況に追い込むことで、それをジャンヌが切り抜けてくれれば自分自身も切り抜けていける。と心の何処かで思っていたのではないだろうか。

 

自分で追い込んでおきながら、実は切り抜けてほしいとも思っている、非常に矛盾した状態だが、そう思ってみてみると。

タルボット達に総指揮官を買って出た時も、名も知らない少女に自分を重ねて進言していたのだろうし。

ジャンヌを森で捕らえた時も、祖国に、シャルルに棄てられた、ことを非常気にしていた。ジャンヌに「どうしてシャルルを棄てたの」と問われ答えることができていなかった。

愛する息子と、その息子に棄てられた自分に重ねて、愛するライオネルとジャンヌを再会させたのだ。

もしこの再会がうまくいき、困難を乗り越えることができたのならば、イザボー太后自身も乗り越えられる、そう思って引き合わせたのでしょう。

 

ただ、結果は非常に残念なものでした、ライオネルは死に、ジャンヌはライオネルを抱き泣き叫んでいました。

この瞬間にイザボー太后は悟ったのだと思います。自分とシャルルはどうやっても元には戻れない、上手くいく未来はないことを。

ライオネルは死んでしまったのでジャンヌとライオネルが上手くいく未来は確実に0%です。イザボー太后は、息子シャルルも生きているので可能性だけでいえば0%ではないのです。

しかしここに来るまで何度も可能性は0ではないと、自分の心に言い聞かせ抗い続けたイザボー太后ですが、実はずっと前から自分の気持に気づいていたんだと思います。

自分がシャルルの手を振り払ってしまったとき、あるいはもう少し前に気づいていればまだやり直せたかもしれない。

まだ可能性は0ではない、そう思いたい気持ちに反して心のどこかでは「もう無理なのだ」と言う気持ちもあったのだと思います。

そうやって自分の気持ちを見ないふりしていた結果が、今回の結末でした。

なので最後の「どこへ行っても同じこと…ただあのバカ息子の、シャルルの顔が見えないところへ」この台詞がめちゃくちゃ効いてくるんですよね…

先程も書きましたが、シャルルは生きていて、ジャンヌとライオネルの境遇とは違い、可能性はまだ0ではないんです。

でもこのときのイザボー太后は、自分の心にしっかりと向き合うことができるようになっていたので、自らその可能性を0にしたんです。

そうすることでしか、この負の連鎖から抜け出すことはできないし、次の一歩を踏み出すことができなかったから。

重い十字架を背負い生きていくことも、愛する人を失いそして死んでいくことも、どちらも本当に悲しい最期でした。

イザボー太后がいてこそ、ジャンヌがより尊く儚く私の目に映りました。

 

上手側おすすめシーン

第二幕ブルゴーニュとシャルルの和解するシーン。

感動的なこのシーンですが、上手で観劇するとジャルルと抱き合うブルゴーニュ演じる宮地大介さんの表情がとても良く見えるんです。

自らの過ちに気づき、ジャンヌのおかげで心を開くことができたブルゴーニュの、純真無垢な表情がとてもぐっとくるんですよ!😂
そして抱き合う二人の肩口の先に見守るジャンヌが見えるんです、最高のアングルでした。上手の時はあのシーンが非常にいいです!目頭が熱くなりました。

 

下手側おすすめシーン

こちらも第二幕ブルゴーニュとシャルルの和解するシーンのその後。
シャルルがジャンヌに対し「いつか、君の恋も目覚めるはずだ。」と話すシーン。

ジャンヌが "何をおかしなことを言っているのだ" というような表情と所作で、頬に触れたときに血に気づき、スイッチがパチーンと入っていったように見えました。
東京公演の3日目までは、下手側で下手向きのお芝居だったので下手に座ってないと見えなかったんですが、東京4日目はこの芝居をするときに身体を正面に開いて立っていたので、よく見えました。

めっちゃ怒るんよ…ジャンヌ…怖いんよ😂

あとあとこの必死さがあるから余計に辛くなる…

でもここは下手側ならより見応えありなシーンだとおもいます。

 

戴冠式に乱入する父ティボー

このシーンはティボーが持つ小道具からも、センシティブに感じる人が多いかなと思ったのですが、それが演劇のよさというか、人間はショックを受けないと本気で考えたり、受け取ったりできないと思っているので攻めた演出でしたが私的には感謝です。

このシーンのおかげで日本の "平和" って本当?とか、襲撃が起きた当時はすごくショックを受けていたのに時間の経過とともに自分の中には、ほとんど残っていなかったことに驚きました。

物語のワンシーンと繋ぐことでより意識して考えさせられました。

 

深作健太さん

魂のかたちが見えるような、そんな最期の演出がとても好きでした。
冒頭でも語られますが、ジャンヌはまだ19歳。

今回の舞台では、人間じみたところや、心の拠り所みたいなものを見せてくれていたので、ジャンヌに寄り添って最期のシーンを迎えることができました。

ラストはその過酷な運命の終わりに、幼さというか、純真さみたいなものを感じる演出をしてくれているようで、本当におつかれさま、静かに眠ってください、とそう思えました。
だからこそ、今を生きる我々は静かに眠る彼女に戦争の音など聞かせていけないなと…考えさせられました。

戦争は決してなくなることはないのかもしれない、でもいつかそんな日が来ることを願い、考え続けなくてはいけないなと気付かされました。

本当にありがとうございました。

 

余談ですが、ヒヨコ群へようこそ。

大歓迎いたします!

 

 

 

ここからは舞台を観た人は読まなくていいよ!自分用備忘録です。

感想みてて、これどのシーンのこと言ってるんだ?ってなったらここで補完できたら、と思って書き出しました。

序幕

物語は、ジャンヌの故郷ドンレミ村からはじまる。
ジャンヌの二人の姉が結婚することを父ティボーが村に発表。
ティボーはジャンヌも早く嫁がせたいのだが、ジャンヌはその気はなく険悪なムード。
レーモンはなんとか二人の中を取り持とうと必死である。
※レーモンはジャンヌに結婚を申し込んでいる、優しい羊飼いの青年。

そこへ、農夫のベルトランが村へ帰ってくる。その手には穴の空いたヘルメットが。
ベルトランは街で、その兜(ヘルメット)を受け取った経緯を話す。
ジャンヌは驚愕した表情で、その兜を奪い取る。
ベルトランもティボーもジャンヌの様子に呆れ、敵国イングランドの話をはじめる。

自国フランスが攻められ、ヴォークルールは降伏を決めた、と話していると

※街、城があったところ
ジャンヌの頭に聖母マリアの声が響き、取り憑かれたように、叫びだす。
「降伏などありえない!」そう訴えジャンヌは、国を救うためフランス王シャルルのもとへ向かうことを決める。

出発を前に、大好きな故郷への別れを惜しむジャンヌに、またも聖母マリアからの声が聞こえる「決して恋をしてはならない。その代わりに勇気を、名誉と力を与える。オルレアンを救い、フランス王を即位させるのだ」

 

第一幕

フランスは敵国イングランドに攻め込まれ国民は困窮している状態。

戦時中だというのに、まるでそんな様子が見えないシャルル王に対して苛立ちを隠そうとしないデュノワ。
当のシャルル王は、裏切り者であるブルゴーニュに和平を求める手紙を送ったので、まもなく解決するであろうと楽観的。

そこに、使者として遣わしていたラ・イールがもどってくるのだが、ブルゴーニュは和平に応じる様子は全くなく、さらには敵国についている母であるイザボー太后も、息子であるシャルルへの情など一切見せる様子がなかったことを知らされる。

シャルルは絶望し、愛人のアニエスと亡命することを考えるが、アニエスにも国を棄てることに反対される。
デュノワ、ラ・イールは愛想を尽かし、二人をおいて出ていってしまう。

外からファンファーレと大歓声が聞こえると、デュノワとラ・イールが傷ついた騎士をつれ戻ってくる。騎士は味方の勝利を告げに来たのである。
騎士が話すには、ひとりの少女が馬に乗って現れ、軍勢の先頭に立つと敵の中心に突撃していった。すると敵は武器も盾も放り出し、フランスは勝利した。

それは戦いなどと呼べない一方的な虐殺であったと、シャルル王につたえる。

そしてその奇蹟の少女はシャルル王に謁見したいという。
奇蹟をにわかには信じられないシャルル王は少女を試そうとするが、その奇蹟を目の当たりにしジャンヌのことを信じることになる。
ジャンヌは自分がシャルルをランスへ連れていき、必ず即位させると約束をする。
そしてジャンヌは純白の旗を用意してもらい、戦場へと出発していく。

 

第二幕

舞台は敵国イングランドへ移る。
フランスを裏切ったシャルルの従兄弟であるブルゴーニュ公爵が登場。
先刻の敗北を嫌味ったらしく話しているとイングランド軍の総指揮官タルボット、
その部下である騎士ライオネルが登場。

ブルゴーニュの嫌味に対し、タルボット、ライオネルは母国を裏切ったブルゴーニュに責任があると詰め寄る。
これにはブルゴーニュも怒りをあらわにし一触即発な状態に。
そこへシャルルの母イザボー太后が現れて場をおさめる。

さらにイザボー太后は、親の仇であるイングランドと手を組んでまで築き上げた地位を捨てるのかとブルゴーニュを煽り立て、タルボットとの和解を命じる。
嫌々ながら和解する二人をみて満足げなイザボー太后

 

敗北した先の一戦について、イザボー太后は息子シャルルは小娘の力を借り、勝利を収めたのであれば、

こちらはイザボー太后自らがイングランド軍の総指揮官を買って出ると宣言するも
ブルゴーニュ、タルボット、ライオネルに揃って断られてしまう。
味方だと思っていた三人にぞんざいな扱いをされ裏切られたことで、恐ろしい形相で恨み言を吐きかけ、その場を去っていく。
自分を追放した息子のシャルルをはじめとした、男への恨みのパワーを見せつけるシーンだった。

ジャンヌはフランス軍を率いてイングランドへ進攻。
イングランドモンゴメリを追い詰めるジャンヌ。
必死に命乞いをするモンゴメリを非情に討ち倒す。
ジャンヌはこの時、初めて人を殺しショックをうけている。
涙を流し、祈るように聖母マリアの名を呼ぶ、そしてあたり一面が死体の山であったことに気がつく。
甲冑を着た黒の騎士が現れ、ジャンヌに呼びかけてくる

デュノワがブルゴーニュを捕らえて登場。
今までの恨みを晴らすように殴りつけるがジャンヌはこれ以上血を流してはいけない、と止める。困惑するデュノワ。
ジャンヌはブルゴーニュに和解の意を伝えるが、黙れ魔女めと跳ね返されてしまう。
しかしジャンヌの真摯な説得によりブルゴーニュの心が開かれていく。

ブルゴーニュはジャンヌの言葉に心打たれ、従兄弟のシャルルと抱き合い和解をする。
ブルゴーニュはシャルルに裏切りを謝罪し、償いとしてシャルルのために戦い、領土のすべてを取り戻すことを約束する。
シャルルはこれを受け入れ、和解をもたらせてくれたジャンヌに対し貴族の位を授け、ジャンヌを妻にするものはいないかと呼びかけた。
デュノワ、ラ・イール、そしてブルゴーニュまで申し出てくる。
その場が和むのだが、当のジャンヌには一切その気はなく、むしろ愛や恋というものに対して異常なまでの拒絶反応をみせる。聖母マリアとの約束が彼女を縛っているのである。

また敵軍が攻め込んできたという報告に、デュノワ、ラ・イールを率いて喜々として戦場に駆け出していく。

そしてブルゴーニュ、シャルルも戦地へと向かう。一人残るアニエス

 

第三幕

戦闘中に重症をおったタルボットとライオネルが登場。
タルボットに肩を貸すライオネル。
自分の死期を察したタルボットはライオネルにパリまで逃げるよう告げるのだが、
ライオネルからパリの市民たちは敵国へと寝返ってしまったことを知らせれる。
イングランド軍 総指揮官として国に尽くして生きてきたタルボットは、民衆の裏切りに絶望の淵に立たされる。
せめてもと、ライオネルに軍の退路を託し自分はここを死地に選ぶ。

タルボットは人生を振り返り何一つあの世へ持っていくことも、この世に残すこともできないまま死んでいくことを、絶望の淵で語り、
そこへ現れたジャンヌにとどめを刺され絶命する。

またも人を殺めてしまい、苦しむジャンヌの前に黒の騎士が現れる。
斬りかかるも、弾き返されてしまう。
ジャンヌは黒の騎士が、この世のものではないことを感じる。

そこへ復讐に燃えるライオネルがやってくる。
ジャンヌはひと目で恋に落ちてしまい、身動きが取れなくなる。
ライオネルはジャンヌに斬りかかるものの、剣を弾き落とされ死を覚悟するが、ジャンヌはとどめを刺すことができない。
とどめを刺せと訴えるライオネルだが、ジャンヌは武器を捨て素手で殴りかかり、終いにはライオネルの胸に泣き伏せてしまう。

再度、黒の騎士が現れ、ライオネルを殺せとジャンヌに訴えるがジャンヌはライオネルを助けることを選ぶ。
敵の憐れみで生き永らえたくない、他のイングランド兵は殺すのに何故だと詰め寄られるが、ジャンヌはライオネルの顔を見ることができず苦しみ、少女のような表情で、聖母マリアに助けを求めだす。

 

聖母マリアの声が聞こえる。しかしジャンヌが求める救いの言葉ではなく、村を出る際に約束した、「決して恋をしてはならない」という言葉だった。

その言葉に自らが恋に落ち、誓いを破ってしまったことを自覚する。
その様子を見ていたライオネルは、ジャンヌを心から助けたいと思うようになっていった。
ジャンヌは自国の騎士にライオネルが見つかれば危険だと伝えるが、ライオネルは自分がジャンヌを守ると強く訴える。
お互いに恋に落ちてしまい、ライオネルが討たれてしまうことがあれば、自分も死ぬ!とジャンヌは思いを伝えてしまう。抱き合う二人。

ジャンヌは離れようとするが、ライオネルは「また会えるか?手紙をくれるだろうか?」と再会を口にする。
ジャンヌは頑なに拒否する。見かねたライオネルは、再会の約束にとジャンヌの旗を持ち去ろうとする。
ジャンヌは意を決し、ライオネルを呼び止める。二人は激しく愛し合うと、夜更けのうちにライオネルは去っていってしまう。

ジャンヌが一人で横たわっているところへ、デュノワとラ・イールがやってきてジャンヌを抱き起こす。
様子のおかしいジャンヌを抱きかかえると、血が流れていることに気がつく。
ジャンヌはそのことを指摘され、自責の念から「自分の命も流れていってしまえ!」と叫ぶ。
暗転。

 

第四幕

座り込むジャンヌに優しく羽織をかけてくれるアニエス、優しくジャンヌに話しかける。

ジャンヌがジャルルをランスへ導き、国民の夢をあっという間に叶えてくれたことへ感謝するアニエス
シャルル王の戴冠式の準備が整っていることを告げ、一緒にゆこうと手を差し伸べるのだが、ジャンヌは応じない。

アニエスはもう戦いは終わり、ジャンヌは心の鎧を脱ぎ棄てるべきだと説得するが
ジャンヌはより固い鎧を欲し、アニエスの言葉を拒む。
アニエスは、ジャンヌに優しく話し始める。「自分は英雄にはなれない、そして心を満たしてくれるものは、たった一人の恋人である。」
それはジャンヌも同じであるはず、幸せになっていいのだと。
しかしジャンヌは自分の闇でアニエスの光を穢したくないと、頑なにそれを否定する。

 

血まみれの旗をもったデュノワとラ・イールがやってくる。
戴冠式の行列の先頭で旗を掲げるよう伝え、ジャンヌに旗を渡そうとするが
ジャンヌは旗を見ると震えだし、逃げ出し聖母マリアへ許しを請いはじめる。

「罪を犯した、誓いを穢してしまった。」ジャンヌのその言葉にアニエスとデュノワは何があったのか気がついてしまう。
だが迫る戴冠式をつつがなく終わらせることを優先し、何があったのかを口にすることはなかった。
ラ・イールは無理やり旗をジャンヌに持たせようとするが、ジャンヌはそれを振り払い、駆け出してしまう。
駆け出した先で、ティボーとレーモンにぶつかるのだが、ジャンヌは気づかない。
ラ・イール、デュノワもジャンヌの後を追い退場。

 

戴冠式が執り行われるなか、父ティボーとレーモンは、先程のジャンヌの様子について話す。
ジャンヌの死んだような表情にレーモンはこれ以上見ていられないと、逃げ出してしまう。
ティボーは意を決し、ジャンヌを神の御許へ戻すことを決める。

戴冠式に参列するジャンヌは人混みの中にレーモンをみつける。
村にいた頃を思い出し、村を出てから今までが実は長い夢だったでは、と思い始める
恐ろしい戦場も、お告げも全て夢であったなら…
そんな思いも、花火と鐘の音で現実へと引き戻される。
「どうして一人でこんなところまで来てしまったのか…」と嘆くが聖母マリアは何も応えてはくれなかった。

ファンファーレが鳴り響き、シャルル王が王冠を被り登場する。
デュノワ、ラ・イールの万歳!をキッカケに民衆も声をあげる。
シャルル王は民衆の声に応え、演説をはじめる。
そして、フランスに勝利をもたらせたジャンヌの奇蹟を祀る祭壇を設けることを宣言する。

そのときジャンヌの父ティボーが民衆の前に乱入してくる。一同は、乱入者がジャンヌの父であると聞き困惑する。
ティボーはジャンヌが神の使いではなく悪魔のしもべであると民衆に訴える。
はじめは民衆も信じなかったが、まことの父親が言う事であること、ジャンヌが言い返せない様子をみて、次第にジャンヌを魔女だと罵り始める。

アニエスやラ・イール、デュノワが必死にジャンヌをかばうが民衆の声は鳴り止まない。
これにはシャルル王もジャンヌに身の潔白を問う。しかし答えられないジャンヌ。
父ティボーは泣きそうになりながら、ジャンヌに答えを問うが、ジャンヌはそれにも答えない。
天の怒りのような激しい雷鳴。そして雨が降り始める。
シャルルは、自分を裏切り敵国へと渡った母親と同じように裏切るのか、とジャンヌを蔑み去ってしまう。

 

雨の中、立ち尽くすジャンヌにデュノワは「たとえあなたが何者であろうと、自分の女だ。ずっと信じている。助けさせてほしい。」と抱きしめる。
デュノワの腕に手を伸ばしかけるジャンヌ。
そこへやってきたアニエスに、城に戻るよう言われたデュノワはジャンヌを離し城へと戻っていってしまう。
デュノワが去ったあと、しばらく一人で立ち尽くすジャンヌのもとへレーモンがやってくると、ジャンヌの手を取り連れ出した。

レーモンとジャンヌは激しい雷鳴の中、人の立ち入らない暗い森の中へ逃げ込み、雨宿りをしている。


レーモンと話し始め、表情が柔らかくなっていくジャンヌ。
「もう一人で大丈夫。運命に身を任せることにした。マリア様が定めた運命に、何があろうと従い、臆病にはならない、そう決めた。」そう話すとレーモンはジャンヌの無実を民衆に訴えようとするのだが、ジャンヌは誤解されたままでいいという、いつか真実が伝わるその日まで。永遠を知ったジャンヌの表情は晴れやかになっていた。

 

イザボー太后率いるイングランドの兵士がやってくる。
レーモンはジャンヌと共に逃げようとするが捕まってしまう。
ジャンヌは自らが捕虜になることを条件にレーモンを逃がす。

イザボー太后はジャンヌに軍を離れた理由を問う。
ジャンヌは追放されたことをイザボーへ伝えるが、それ以上は何も言わない。
イザボー太后は、自分と同じく祖国に捨てられた女として、ジャンヌに並々ならぬ関心を寄せ。オルレアンの魔女と、オルレアンの生き残りを再会させると宣言する。

※ジャンヌとライオネル

 

第五幕

戦場。イングランドが勢いを吹き返しフランスは劣勢。

ジャンヌが去ったあと、デュノワは先頭に立って指揮するも、勢いを取り戻したイングランドに押されてしまうフランス軍
ジャンヌがいないだけで圧倒されてしまい、彼女の存在の大きさを改めて知ることになる。

そこへ傷ついたレーモンが登場。
ジャンヌがイングランドの兵に捕らえられたことを伝える。
デュノワは全軍にジャンヌを救えと命令を飛ばし、ジャンヌ救出へと向かう。

 

捕らえられ高台に立たされているジャンヌ。傍らに立つライオネル。
遠くからジャンヌを殺せと叫ぶフランスの民衆の声が聞こえてくる。
ジャンヌは、自分が生きている限り民衆が収まらない、はやく自分を殺すようにと訴える。
ライオネルはジャンヌに対し、自分に助けを求めるよう訴える。自国を棄ててでも助けると伝えるがジャンヌは、自分の国も愛せない男を、愛することはできない。と一切を拒絶する。

 

イザボー太后は、ライオネルにフランス軍と戦いに行くように命じる。
ライオネルはジャンヌの身を案じ、自分が戻るまでことを起こさぬよう、逃げないと誓えと言うが、ジャンヌは自由こそ私の願いであると、その訴えもはねのける。
泣く泣くライオネルはジャンヌを三重の鎖で縛ることに。
なんとしても生きてほしいライオネルと、敵国に屈することを良しとしないジャンヌ。
ライオネルは戦地に向かう間際、自分が戻ってきたときに心変わりしているようにジャンヌに伝え、イザボー太后にも自分が戻るまで手を出さぬよう念を押し、戦場へと出発していく。

 

ライオネルが去ると、イザボー太后はジャンヌが貼り付けにされている火刑台に火をつけ火あぶりにしはじめる。
ジャンヌは最期の最期まで、命乞いすることはなく、自国の兵を激励し続ける。
どんどん火がまわり、薄れゆく意識の中で、イエス様に自分の魂を送るかわりに、力を与えるよう呟き、ついに絶命してしまう。
イザボー太后は、ジャンヌが絶命したことを確認する。

 

しかし次の瞬間、絶命したはずのジャンヌの声が響き渡る。
「今こそ、私に自由を!」という声とともに、ジャンヌが蘇る。

そして恐ろしい叫び声をあげながら、自らを縛る鎖をとてつもない力で引きちぎり、
襲いかかる兵をなぎ倒す。

その直後、戻ってきたライオネルにジャンヌは斬り伏せられる。
昏倒しているジャンヌを見て、後悔しながら震えるライオネル。
だが次の瞬間、ジャンヌは突如起き上がりライオネルから剣を奪い斬り伏せる。

ライオネルは絶命しジャンヌの胸の中へと崩れ落ちていく。
ジャンヌは自らが斬り伏せたライオネルを優しく抱きかかえ、大声で泣いている。

 

すべてが終わり、呆然としているイザボー太后のもとへ、デュノワとラ・イールがやってくる。
かつての部下である二人にどこへと連れて行けば?と問われたイザボー太后は、「シャルルの顔のみえないところへ」と言い二人に連れられて退場していく。

 

シャルル王に抱かれ死んでいるジャンヌ
ブルゴーニュ、デュノワ、ラ・イールに見守られている。

皆がジャンヌの死を悼んで嘆いていると、アニエスが赤子を抱きながら登場し、ジャンヌが目を覚ます。
ジャンヌは目を覚ますと、自らが魔女ではないことを訴える。
皆も、すでにそのことを理解してジャンヌに優しい微笑みを向けていた。

 

ジャンヌを呼ぶ聖母マリアの声がきこえはじめる。
足音と戦場の音が響き渡り、「お前の後を継ぐ者たちだ。導け。」といわれるが
ジャンヌはそれを拒絶する。
すると足音と戦場の音が消え去り、光がジャンヌを照らし出す。

そうしてジャンヌは気づく、この世界には敵も味方もないのだと。

そのことに気づいたジャンヌは、天国の扉が開かれ、イエス様とマリア様に迎えられ天に召されていく。苦しみは短く、歓びこそが永遠。

ジャンヌは本当の最期を迎え、デュノワの胸の中で柔らかい表情で息絶える。

 

シャルル王の手を挙げ、「ジャンヌに、旗を!」

その声をキッカケに、鳴り響く協会の鐘の音と、サイレンの音。
舞台は暗転して終幕。